こんにちは、悠帆堂です。
わりと近所なのに、気になりつつもなんとなく行っていなかった場所というのはあるもので、東京都稲城市の「スコープドッグモニュメント」もその1つでした。
稲城市では、魅力的な街づくりの一環として「大河原邦男プロジェクト」を推進しています。大河原邦男さんはアニメに登場するメカのデザイナー。誰もが一度はその作品を目にしたことがあるといっても過言ではないメカニックデザインの第一人者です。稲城市でお生まれになり、現在もお住まいだそうで、「スコープドッグ」をはじめ作品のモニュメントが市内に点在しています。

それではいってみましょう。
1/1スケール スコープドッグ
JR南武線「稲城長沼」駅南口にある「いなぎペアパーク」。稲城らしい、ちょっとのんびりした空気の中に「スコープドッグ」は立っていました。

「スコープドッグ」は1983年から翌84年にかけて放送されたロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」に登場するメカです。「装甲騎兵ボトムズ」は名作だと思いますが、親しみやすく誰もが知っているというタイプの作品ではたぶんありません。放送当時からそういう印象があったので、こうしてモニュメントができたという話を聞いたときにはちょっと不思議な気がしたものです。

モニュメントは設定通りの大きさ。「スコープドッグ」は、いわゆる巨大ロボットではありません。最初の放送当時、このサイズ感は印象的でした。リアルロボット路線の代表作といわれるゆえんですね。


一体で成型してしまうのではなくて、バラバラのパーツを組み上げてある部分が多いようです。ていねいにプランニングされている印象です。カッコいいなあ――。
ガンダムとシャアザクがいる「いなぎ発信基地ペアテラス」
JR南武線の高架下には「いなぎ発信基地ペアテラス」があります。いわゆる観光案内所ということになるのですが、これは――。

大河原邦男さんといえば、まあ、これですよね。3m以上はあるようで、ファースト世代には親しみのあるどっしりフォルムがいい感じです。


「いなぎペアテラス」では、観光案内所としての機能のほかにカフェや物販も。ボトムズグッズも販売されています。

こちらはこれまでに市販された関連グッズのコレクション。展示だけの非売品です。訪れたファンのためのノートもあります。

むせる。
コーヒーとあんぱんをいただきながら「むせる」と「苦い」のお話
「いなぎ発信基地ペアテラス」で飲んだコーヒーのカップには「ムセル」の文字。そして商品名は「稲城の苦いコーヒー」。興味のない方にとってはなんのこっちゃ?という感じですが、この「むせる」と「苦い」は、ファンにとって「装甲騎兵ボトムズ」のキーワードなんですね。今さらですが、ちょっとお話します。

「むせる」というのは、オープニング曲の歌詞にあるコトバです。歌詞に「炎の匂い しみついて むせる」という一節があるのですが、画面ではその字幕が一度に出ずに「むせる」という3文字だけというカットがあって妙に印象的なのです。主人公のアップの映像の下に「むせる」という3文字だけの字幕…。
「苦い」は、予告編のナレーションの一節です。引用してみましょう。
食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。牙を持たぬ者は、生きてゆかれぬ暴力の街。あらゆる悪徳が武装する、ウドの街。ここは百年戦争が産み落とした惑星メルキアのソドムの市。キリコの躰にしみついた硝煙の臭いにひかれて、危険な奴らが集まってくる。
次回「出会い」
キリコが飲む、ウドのコーヒーは苦い。
※「装甲騎兵ボトムズ」テレビシリーズ 第3回予告編より
これは第2話が終わった後の次回予告なのですが、最後の決めコトバに「コーヒー」と「苦い」が出てきました。これが「稲城の苦いコーヒー」の元ネタ。「装甲騎兵ボトムズ」の次回予告では、内容も最後の決めコトバも変えながら最終話までこのトーン&マナーが貫かれます。とにかく徹底してこのテンションな上に全52話という圧巻のボリュームですから、もうこのナレーション自体がファンにとって大切な作品の一部。まあ、平たく言えば「癖になっちゃう」のです。
ということで、オープニングも予告ナレーションも、ものすごくカッコいいわけです。が、カッコいいということはカッコよすぎちゃってイジられるということでもあったりします。「装甲騎兵ボトムズ」はこうして実に40年にわたってファンに愛され、イジられ続けてきたわけですね。

最近はそういうこともなさそうですが、往年のアニメファンには公的な組織がこうした形で好きな作品に関わってくるのを嫌がる傾向もあったのではないかと個人的には思ったりもします。ところが、稲城市のスコープドッグについては、寡聞ながら私はそうした反応を見聞きしたことがありません。
やっぱり大河原邦男さんの出身地であることと、スコープドッグのモニュメントのクオリティがもたらす説得力なのでしょうね。
〈いなぎ発信基地ペアテラス〉※「スコープドッグ」は、隣接の公園「いなぎペアパーク」にあります。
■営業時間 10:00~19:00
■定休日 年中無休(12月29日~1月3日除く)
■公式サイト https://inagi-kanko.jp/?p=we-page-entry&spot=259381&cat=17747&pageno=3&type=spot