金沢八景で遺跡見物「六浦上行寺東やぐら群遺跡」

史跡・神社仏閣

2025年1月22日、遺跡に遊びに来ていたお子さんがけがをされる事故が発生し、復元地の管理をしている横浜市教育委員会事務局生涯学習文化財課では、安全が確認されるまで立入禁止措置をとるとのことです。(記:2025年1月25日)

こんにちは、悠帆堂です。
今回は、横浜市の金沢区に中世の遺跡を見にいこうと思います。
京浜急行本線「金沢八景」駅から徒歩圏、高台のマンションのすぐそばにちょっと不思議な風景が広がる一角があります。1984年の発掘調査で鎌倉~室町時代の遺跡であることが判明した「六浦上行寺東やぐら群遺跡」です。

それではいってみましょうか。と、その前に――。

環状4号線から小径を入って。ちょっとわかりにくい入口でした

「金沢八景」駅からのルートをGoogleマップで検索すると、このように表示されたのですが、遺跡の入口がわからず、結局、歩いているご近所の方に聞きました。教えてくれた方、ありがとうございました!

実際は、上の画像の赤い矢印のところを折れて小道を進み、その先にある階段を上がります。これなら素直に駅前から16号線を通って「六浦」交差点を曲がるルートでいいかもしれないですね。

さて、急な階段を上ります。すると突然、石窟のようなものがあらわれます。

実は、この遺跡は巨大なレプリカです。型をとってガラス繊維補強セメントを用いて再生する「造形保存」と呼ばれる方法で再現され、ここに移動させたものだそうです。発見された遺構は、この丘の頂上から上・中・下と3段の部分で構成されていて、中でも特に注目するべきものとして、頂上部の平場の遺構が、こうした形で保存されています。

お顔は失われていますが、阿弥陀如来の摩崖仏や五輪塔が刻まれた「やぐら」があり、平らな部分には建物の礎石になっていたと思われる跡や池の跡があります。

どのような寺院であったのか分かっていないことも多い“幻の寺”。同じ金沢区の洲崎にある龍華寺の前身であった浄願寺跡の一部ではないかと推定され、関東に真言律宗を広め、鎌倉の極楽寺で生涯を閉じた僧・忍性にゆかりの寺であったとする研究があります。
※「中世寺院の風景 中世民衆の生活と心性」細川涼一 著(法蔵館文庫)を読ませていただきました。

鎌倉の重要な海の玄関口だった中世の六浦湊

この遺跡からは現在でも朝比奈切通を抜ければ鶴岡八幡宮までの距離は7km程ですから、鎌倉の一部といってもよかったのかもしれませんね。鎌倉の特徴的なお墓として知られる「やぐら」も、鎌倉の他では金沢区あたりの一帯に分布しているのだそうです。

そして、六浦は中世の頃、鎌倉の外港として栄えた湊(みなと)でした。この丘からも海を見晴らすことができたのでしょう。遺跡のすぐそばにある古刹「上行寺」の前にも船着き場があったということらしいのですが、現在の眺望からは想像できません。

そこで、ちょっと中世の六浦湊のジオラマの画像を。これは、後日、横浜市歴史博物館で撮らせていただいたものです。やっぱり現在とはまったく違いますね…。白い点線は現在の海岸線です。

横浜市都筑区にある「横浜市歴史博物館」に展示されているジオラマです。

確かに海のすぐそば。

画像の中央付近に「上行寺」があります。その右側の丘でしょうか。

帰る前にちょっと弁天様にごあいさつ。平潟湾を眺めていきます

見物を終えて、駅から電車に乗る前に、せっかくなので水辺が見たくなって「琵琶島神社」に立ち寄りました。平潟湾に突き出た半島のような参道の奥に弁天様がお祀りされています。北条政子が竹生島から勧請した弁天様だそうです。

おお、あなた様はもしかして最近、バンド少女が出てくる某人気アニメにご出演されていませんでしたか?

寄り道:マンションと遺構が共存する「二代目横浜駅基礎等遺構」

「六浦上行寺東やぐら群遺跡」の保存については、マンション開発の過程でのことでもあり、いろいろと議論があったようです。その結果、現在のかたちに落ち着いたわけですが、マンションと遺構の組み合わせを眺めていて、そういえば他でもこういう場所を見たことある気がするなあ…と思い出し、帰りに寄り道しました。場所は横浜市西区高島町。

高島町の交差点のすぐそばにあるマンションの外構部分の一角には「二代目横浜駅基礎等遺構」が保存されています。

日本で初めての鉄道が結んでいたのが「新橋」と「横浜」だったわけですが、初代の「横浜」駅は、現在の桜木町にありました。その後、東海道線との接続などの関係から1915年に駅舎が移されるわけですが、それが「二代目横浜駅」になります。残念ながらこの駅は開業からわずか8年後に関東大震災で外壁だけを残して消失。「横浜」駅は現在の場所で三代目として再々スタートを切ることになります。

遺構は横浜市の歴史的建造物に指定され、マンションの公開空地として一般の方も見て触れることができるようになっています。

〈上行寺東遺跡隣地復元整備地〉
■24時間入ることができます
■休園日・入園料はありません
■参考サイトとして 
https://yokohama-kanazawakanko.com/spot/institution/reki/reki009/ (横浜金沢観光協会)